ひこぼしくんが行く!工場の5つ星を探せ!

豊栄産業株式会社

8回目の今回は、枚方市春日西町にあるダンボールの会社、豊栄産業株式会社さんにおじゃましました!
豊栄産業さんは、「ダンボール家具」がテレビで紹介されたことがあるので、ご存知の人も多いかもしれませんね。でも豊栄産業さんはダンボール家具だけじゃないんです。それ以外にも、私たちの身近なモノをいろいろ作っているんだって!
一体何を作っているのか?どんな人がどんな風に働いているのか?色々なお話を聞いてきました!

ダンボールのイメージが変わる!豊栄産業ってどんな会社?

野々宮社長、今日はよろしくお願いします。さっそくですが、豊栄産業さんではダンボールの紙を作っているのですか?それとも加工しているのですか? 

野々宮社長 ダンボールの紙を使った加工をしています。ダンボール業界は、大きく3つに分けられます。1.ダンボールの紙、いわゆるシートを作る「シートメーカー」。2.そのシートを使ってボックスに加工する「ボックスメーカー」。3.シートもボックスも両方やる一貫メーカーです。弊社は、2番目のボックスメーカーです。

なるほど~!では豊栄産業さんのお仕事を教えてください。

野々宮社長 例えばコンビニエンスストアに行ったら、きれいでカラフルな箱や、紙で作られた陳列棚に新商品が並んでいるのを見たことがあると思います。あと家電売り場のフロアにはキャラクターが描かれた大きな紙の看板が、ポンと立っていますよね。
そうしたいわゆる「ディスプレイ」といわれるものの制作に力を入れています。社内ではSP(セールスプロモーション)事業と呼んでいて、設計からやっているんですよ。

野々宮社長

販促什器ディスプレイ 見本その1

販促什器ディスプレイ 見本その2

あれ?いきなりダンボールのイメージがひっくり返りました!

野々宮社長 そうでしょう?こうした企業向け製品の他に、一般のお客様向けの商品も開発、販売しています。はじめに製品化した子ども向けのままごと遊び用のおもちゃは、スタッフのアイデアです。うちの設計の腕を生かせるからと挑戦しました。20回以上試作を繰り返して、ダンボールキッチンや、ダンボールハウスを完成させましたね。それが発展し誕生したのがダンボール家具です。これは単身者が使うことを想定しています。数年して不要になれば、ダンボールリサイクルに出して簡単に処分できますからね。

ダンボール家具は10年ほど前から作っていたそうですが、豊栄産業さんが初めてだったんですか?

野々宮社長 いえいえ、すでに他の会社が作っていました。弊社はそれより少しコストを押さえた家具を作りたくて、ダンボールの紙を作るシートメーカーとも協力してテストを繰り返し、現在の丈夫で安価な製品ができたんです。子ども用ダンボール家具がメディアに注目され、弊社の他の商品も紹介していただきました。

ダンボール製のおもちゃの一例

蛇口もコンロのつまみも回せる!ダンボールキッチン

チャイムやドアスコープまである!ダンボールハウス

子ども用ダンボール家具の一例

友だちに自慢したくなりそうな可愛いハンガーラック&チェストセット

どんな部屋にもマッチしそうなデザインの学習机&椅子

ダンボール家具の製作秘話を聞いてみた

ダンボール家具を開発した小畑総合企画部長です。最初に作った家具は何ですか?

小畑部長 本棚です。社内の評判も上々で、タイミングよく開催されていた展示会に見本で出したところ、来場されていた方から販売させてほしいと申し込みをいただきました。これをキッカケに弊社の通販部門でも自社商品として販売することになりました。これがダンボール家具のスタートです。

本棚で苦労したところは?

小畑部長 はじめはストッパーに、プラスチックのネジを使いました。組み立てが楽だからです。でも社長から「組み立てた後に動かす際、ネジが飛んでケガをする恐れがある」と指摘され、ダンボールでできるよう設計し直しました。おかげで“純ダンボール”製品になりました。

さすが!安心・安全の豊栄産業さんです!!他にいろいろアイデア商品があるそうですね。

小畑総合企画部長

小畑部長 猫好きな社員のアイデアで、特に愛猫が城主になる「ネコ丸城」は、ニュースでも話題になりました。ユニークな動物型ボックスも良い感じでしょう?実用品では、例えばお花見で使う椅子。座面部分が箱になっていて、たたんだ脚を収納できる設計です。持ち運びも楽で、こちらも製品化されました!

言われないとダンボールとは気付かなさそうな本棚!

「ネコ丸城」カッコイイなぁ~ぼくも欲しい!

動物型のボックスには、飴やチョコレートが入るんだって!

お花見などにあると便利!持ち運び可能なデスク・椅子

小畑部長はアイデアマンですね!豊栄産業さんのダンボール家具の強みは何ですか?

小畑部長 「強化ダンボール」で作っているのが強みです。純度の高いパルプを用いて古紙の含有量が少ない。だから繊維が長くて破れにくく、強度があります。主に海外輸送用の重量物梱包に使われます。環境に配慮して、木箱や鉄の箱の代わりに使うんです。そのときは二重三重に積層して使いますが、それでは折り曲げられないので、弊社のダンボール家具は一重です。それでも十分な強度があります。

見た目はダンボールですが、実は性質が違うんですね。

小畑部長 そうなんです。普通のダンボールとは、強度がまったく違います。以前、普通のダンボールを使って設計をしたときは補強まで計算に入れていましたが、強化ダンボールはその必要がない。だから設計もシンプルです。
一重の強化ダンボールを扱うのが初めてだったので、挑戦するうちにインスピレーションが刺激され、いろんなものを作ってしまいました。

ちょっと質問ですが……強化ダンボールさえあれば他社に真似されるのでは? 

小畑部長 簡単に真似られないでしょう。なぜなら大量に作る際は型を作り、弊社工場にある機械で強化ダンボールに圧力をかけて、型抜きの要領で抜いていくんですが、この圧力の調整が非常に難しいんです。うちのオンリーワン商品だと思います。

2面継グルアー(この機械で糊貼りをするんだって!)

トムソン(木型をセットして抜き加工をする機械なんだって!)

ダンボール箱から書類保管箱へ 今はインクジェット出力と設計が武器

豊栄産業さんは、ずっとボックスメーカーとしてやってこられたんですか?

野々宮社長 せっかくなので、弊社の成り立ちをご紹介しましょう。祖父が1953(昭和28)年に創業し、私は3代目です。祖父はミカン箱のような、普通のダンボール箱を作っていました。
2代目の父は「もっと面白いことをやりたい」と、「“書類保管箱”を作って通信販売」を始めました。まだ「通販」という言葉もなかった頃で、恐らく海外に行ったときにヒントを得たのでしょう。
年度ごとにまとめた重たい書類を保存する専用ボックスを作った父は、その書類保管箱の広告を印刷したハガキを、全国の、ある職業の人たちに発送しました。会計士さんです。入手した名簿を元に、ダイレクトメールを発送したのです。まだダイレクトメールも珍しかったので、受け取った方々はしっかりご覧になり、おかげで注文が続々と舞い込みました。やがて社内に通販部門ができ、手書きで宛名を書くのは大変だと言うのでオフコン(オフィスコンピュータ)を導入、さらに発送してどんどん注文を取っていったのです。

お父様の着眼点がすごかったんですね!

野々宮社長 多忙のあまり、私も小さい頃は手伝いに駆り出されました。やがてバブルがはじけた影響で社業が傾き、父も体調を崩して入院。そのとき父に「お前の好きなことをやれ」と言われました。考えたのが、これまでやってきたことを生かし、自分も得意な設計の技術も生かしたディスプレイの展開です。
最初は苦戦しましたが、徐々に受け入れられていきました。また環境問題が注目されるようになり木やアクリル、鉄のディスプレイから、紙のディスプレイへ変わったのも追い風になりました。

 売り上げもグッと伸びたんですね。さらにインクジェットの出力対応が追い風になったのですか?

野々宮社長 ディスプレイをやるうちに、「うちはこういう物ができます」と提案するのに、表面にデザインが入った、完成品のイメージに近い方がお相手も判断しやすいでしょう?特に21年からインクジェット出力に力を入れています。これができると、試作品などの小ロットに柔軟に対応でき、おかげで仕事の幅が広がりました。

後ろの本棚ももちろん強化ダンボール製

インクジェット出力と、設計力の2つが、豊栄産業の強みですね! 

野々宮社長 その通り。この2つのバランスが良い会社はなかなかないと思います。インクジェットと設計が強いから、例えば「こんなの作りたい」といったご要望に、普通は7~10日かかるところ、弊社は1~2日で対応できます。なぜできるのか。それは自分たちでお客様の要望に応じてCADで図面を描き、試作できるからです。「そうそう、こういうイメージで!」と納得いただいたり、「ここはもう少しこういう風に」など具体的な意見をいただけます。ここのプロセスが早いと、仕事の進み具合も早いです。

お客様にとってイメージがすぐ形で見えるというのは、感動するしワクワクしますね! 

野々宮社長 ご要望に応じてすぐ作る。自分たちは「設計オンデマンド」といっています(笑)。

CADで設計しているところを見学!

この機械で試作品を作るんだって!

大判インクジェット出力で制作された大型看板

大判インクジェット出力で制作された等身大POP

紙を扱うからこそ考える環境問題と、会社のこれから

 野々宮社長 リサイクルに対して、日本は技術があるし人々の意識も高いと思います。
ただ、例えば女性の化粧品を買うとき、パッケージの表面がツルツルキラキラしているでしょう?あのような加工は、リサイクルしにくい。でも消費者は、そうしたデザインを求めるので、棚にたくさん並んでいますね。
また弊社は今、FSC認証を取る準備を進めています。不用意に森林伐採をせず、二酸化炭素の排出量を抑えることを目的とした認証で、それは良いのですが、認証を取るために大量の書類が必要です。
本当に地球環境を思うなら、そもそも二酸化炭素を出さない社会の仕組みづくりとか、紙ももっとリサイクルしやすい紙に置き換えていくなどしなければいけません。社会で、もっと本質的な部分を見直していけたらと願います。

事業では、これからどんな展開を考えていますか?

野々宮社長 大阪・関西万博もありますし、エコロジーやSDGsに引き続き取り組んでいこうと思います。事業ではWebを使って弊社の特徴をしっかり発信して、メディアなどにも少しずつ取り上げていただきながら展開できれば良いですね。
弊社は8年前から、フィリピンで印刷の事業を行っています。現地でさまざまな印刷物の販売をやりつつ、日本の顧客を相手にBPO事業も始めているんです。

BPOって何ですか?

野々宮社長 ビジネスプロセスアウトソーシング、つまり外注です。具体的にはCADの図面や印刷物、3CDGのデータを描く仕事を、フィリピンの担当者に外注するのです。人手不足の担い手の部分で、デジタルデータの作成を請け負っています。SP事業の一部としてBPO事業を行っていますが、今後はさらに面白いことを増やしていきたいと模索中です。

フィリピンの外注スタッフ

すごい!ダンボールだけじゃないですね。

野々宮社長 何屋さんか分からないとも言われますが、私の中では一貫しています。こういう事業も、外へ発信していきたいですね。

ここ枚方で、何かやってみたいことはありますか?

 野々宮社長 子どもたちに、ものづくりの楽しさを伝えていきたいです。たしかに子どもたちにとって、工場は危険な刃物や道具類がたくさんあるところ。でも危険であることも含めて、体験しなければ分からないことがたくさんあります。
私は小学3年生の頃、近所の自転車屋のおじさんにスパナやドライバーの使い方を教わり、「やってみ?」と実際に触らせてもらいました。あの体験が、自分のものづくりの原点です。

やっぱり実際に手を動かした体験は、忘れないですね。

野々宮社長 ゲーム好きも良い。特にこれからはデジタルの時代ですからね。ただ、だからこそ自分が何を作っているのかをリアルに感じ、リアルに理解できないと、何をしているのか自分でも分からなくなります。
弊社の設計も、コンピュータ上で3DCGで造形したモノを3Dプリンタで出力しますが、これはゲームの中のものがリアルに現れたのと同じこと。コンピュータの中であっても、そこにリアルを感じるためには、やはりリアルな経験が必要なんです。
「ものづくり日本」といわれながら、今、日本ではものづくりに携わる人間は減っています。ものづくりは面白い。うちのオリジナルキャラクター「だんきっちゃん」と一緒に、次世代に伝えていきたいですね。

さっきから気になってたこの子は「だんきっちゃん」っていうんだね!ヨロシク!
今日は色々なお話が聞けました!野々宮社長、小畑部長、豊栄産業の皆様、お忙しい中ありがとうございました!!

野々宮社長とだんきっちゃんとのスリーショット

まとめ!豊栄産業さんってこんな会社!?

  • 自分のアイデアを製品化できる⁉
  • 環境問題への意識が高い!
  • 子どもたちが工場体験できる日も近い?
  • ダンボールでぼく(ひこぼしくん)やおりひめちゃんを作ってくれたりして⁉

※レポーターの勝手な推測です!本当のところはこちらでどうぞ!
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