情熱ものづくりインタビュー
有限会社マサカツ鋼材

必要なものを必要なときに必要なだけ。一気通貫で顧客の要望に応える「鋼材屋」

必要なものを必要なときに必要なだけ。一気通貫で顧客の要望に応える「鋼材屋」 有限会社マサカツ鋼材 代表取締役社長 中坂 征洋

第15回のインタビューでは、有限会社マサカツ鋼材、代表取締役社長の中坂征洋氏にご登場いただきます。

有限会社マサカツ鋼材は、平成10年11月に中坂征洋社長が28歳で興した、鋼材販売からあらゆる鋼材加工までをワンストップで行う企業です。創業当初より「必要なものを、必要なだけ、必要なときにお届けします」を合言葉に、豊富な鋼材をストックし、最新の加工設備を導入して技術を磨き、さらに配送体制も整え、お客様のご要望へのきめ細かい対応に力を入れてきました。

さらに、地域の若者、女性、外国人の社員登用、いち早いアジア進出の試みや拠点間のオンラインネットワーク構築などグローバル化やIT化にも積極的です。時代を先取りしながら歩み続ける中坂社長にお話を伺いました。

「かゆいところに手が届く」鋼材屋

――――そもそも鋼材とは何でしょうか。御社の仕事内容を教えてください。

鋼材とは建築や土木、機械といった、広く工業用の材料として使われる鉄鋼製品を指します。日本の製鉄業界は日本製鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼所といった大手鉄鋼メーカーの下に各部材ごとのメーカーがあり、商社を通じて卸しています。
地域の鉄工所などでは、1本1枚からの鋼材を売ってほしくても、メーカーや大手商社からは、大口でないと買えません。
そこで私たちマサカツ鋼材の出番です。弊社が部材をまとめて買い取り、少量を必要とする地域のお客さまへご提供するわけです。取引するお客さまは、1,000社ほどあり、基本的に枚方市から約30km圏内ですが、その他の地域からもお引き合いを受けています。

――――マサカツ鋼材の工場はいくつあるのでしょうか。

枚方市内に4つと大東市に1つあります。枚方の第1から第4工場はすべて近所で、それぞれ役割が異なります。
本社事務所もある第1工場は、主に鉄板の切り出しや曲げなどの加工作業を行い、CAD室も備えています。第2工場は配送、第3は溶接や切り出し、組み立て、第4はウォータージェットなどの機械を使って切り出しや切削加工を行います。
様々な加工を行えるよう最新の機械を導入し、中には、国からの補助金を活用して購入したものもあります。

――――御社の強みを教えてください。

豊富な品ぞろえと目利き力、社員の技術力と、何といってもワンストップサービスですね。小ロット対応と自社配送の「流通機能」と、設計から加工まで行う「ものづくり」の機能を併せ持ち、地域のあらゆる鉄鋼需要に応えられることが当社の強みです。
通常鋼材屋は“曲げる”・“穴をあける”など、得意な鋼材の単加工だけ行い、その他の加工は他社と分業化して成り立っていました。しかし、お客さまから、これもできないか、あれもしてもらえないかとちょっとした要望が重なってきたのです。
そこで私たちは、お客さまからの要望を受けて一台、また一台と機械を導入し、鋼材を切ったり曲げたり、穴を開けて小ロットからニーズに応えるようにしました。
それに伴い社員の技術力も向上し、お客さまに必要なものを必要なだけ、加工した鋼材や金属を多品種小ロットで提供できるようになったのです。本当に難しい製品を除いて、今は3D CADによる設計から素材の切り出し、溶接、仕上げてメッキから塗装を施す完品製作まで一気通貫で行います。自社トラックも4トン車を中心に10台持っており、配送部隊が配達に回ります。ですからコストを抑えるのはもちろん、納期もご要望に沿いやすい。これも強みと言えるでしょう。
ここまでやれるのは、マサカツ鋼材だけと自負しています。
あと特徴として、外国人従業員が多いのが挙げられます。社員は53名おりますが、そのうち20名が外国人従業員。早い時期から外国人を登用して、さまざまな部署に配置しているのも、弊社の特徴と思っています。

第一工場(本社)

ファイバーレーザーでカットしています

ステンレスなどもレーザーでカットしています

第二工場

お客様の下ろしやすいように積み込んでいます

客先ごとに梱包しています

第三工場

ハシゴの加工品を製作しています

タイルなどのカットもしています

第四工場

ウォータージェットで何でも切れます

加工機械で精密加工をしています

「サテライトオフィス」を10年前から先駆、進出した東南アジアとオンラインを利用して共に仕事

――――海外にも工場をもっておられましたね。

現在はコロナの影響で撤退しましたが、10年以上前に当時、金属や鋼材を扱う日本の中小企業は少なかったのでベトナムやカンボジアへ進出しました。ベトナムホーチミンへCAD室を置いたのを皮切りに工場を設立しました。その後カンボジアのプノンペンにも同じく工場を持ち、設計には、現地の優秀な人材を担当者として登用しました。そしてCAD室や工場には高性能カメラを10台以上置き、インターネットとモニターを使って日本の事務所から現地の様子を逐一見えるような環境を構築したのです。時差もわずか2時間ですから、図面のやり取りや連絡もスムーズで、まるで隣室で共に仕事をしているようでしたね。

―――ではコロナさえなければ、今も操業していましたか。

海外展開は、困難にぶつかることばかりでした。
大きくは日本との事情の違いです。はじめは日本と同じやり方で現地の仕事を取ろうとしたのですが、思いのほか、高品質な鋼材への需要は少なく、ローカル企業とバッティングすれば、価格の面でなかなか対抗できなかったことも苦戦した原因でした。現地のやり方に対応しながら、ようやく軌道に乗ってきた矢先にコロナ禍に突入、物流が止まりました。結果、両国から撤退する決断を下したのです。
それでも、優秀な人材を登用できたことは大きかったですね。現在も、本社のCAD室で5名、現場でも5名のベトナム人エンジニアに働いてもらっています。

これまでの地道な取り組みで、コロナ禍を乗り切る

――――御社のコロナウイルス感染対策について教えてください。

感染拡大当初から、衛生用品の確保や対策のためのルール作りなど、積極的に感染防止への取り組みを行ってきました。緊急事態宣言時には、時差出勤や間引き出勤などの対応も行いましたね。そのおかげで、これまで一人の感染者も出ず、みんな健康です。

―――コロナ禍を機に会社が変化したことや、乗り越えたことがあれば教えてください。

現時点で、前年比で営業成績は予想したほど落ちていません。大きく売り上げが伸びたわけでもありませんが、売上が伸びた分野と下がった分野とが同じくらいでした。これまでワンストップでお客様のニーズに常に応え、幅広い事業を自社でまかなってきたからこそ、コロナの影響を最小限にできたのではないかと思われます。
一番変わったことは、生産性への意識ですね。怪我の功名ですが、感染拡大予防のためできるだけ速やかに仕事を終わらせようという意識を全社で共有し実行したので、やればできるということが経営陣も従業員も身に染みてわかりましたね。この意識を大事に維持しながら、これまで築き上げてきた国内外のネットワークを生かし、今後も着実に商売を広げていきたいですね。

頑張る従業員を大切に

―――福利厚生について教えてください。

小規模ですが、専属シェフのいる社員食堂を備えています。以前はみそ汁とカレーは常に用意しながら、ビュッフェ形式で毎日変わるメニューを楽しんでもらっていました。コロナ禍の今は、手作り弁当に切り替え、格安で希望者に提供しています。
また外国人研修生を対象にした、日本語教室を毎週土曜日に2時間開いています。そこには研修生本人だけでなく彼らの家族や、また地域貢献の意味も込めて近所の会社の外国人研修生も参加しているんですよ。やはり日本語がわかれば周囲の日本人とのコミュニケーションも取りやすくなりますし、海外に工場のあった頃は、帰国してもそこで働いてもらいたいという気持ちがありました。
コロナ禍でも頑張ってくれている社員が働きやすい環境を創っていきたいと願っています。

―――若手社員も定着していると伺いました。

毎年、枚方市内企業若者雇用推進事業に求人を出しています。この事業で実施された企業見学や交流会をきっかけに入社した若手社員がいます。一般に製造現場の若手の定着率は低いと言われていますが、今も続けて勤務してくれています。若い人が一生働きたいと思える職場づくりを目指したいと考えています。

◆若手社員さん曰く
「製造業は未経験でしたが、ものづくりがしたいと思い入社しました。社長は気さくで優しい方です。時々差し入れをしてくれます。夏、工場が暑いときなどの作業は大変ですが、辞めたいと思ったことはありません。」

若手社員が、一つずつ技術を習得し成長する姿は、頼もしく、将来が楽しみです。

着実に、できることを一つずつ

―――今後の戦略や取り組みを教えてください。

メーカーでない私たちは、企業相手のBtoBでやってきました。今後もその基本姿勢は変わりませんが、少しずつ一般顧客向けにも何かできないかと模索しています。社会のニーズが多様化し、他社との競争も激しくなる中で、お客さまの目を引くような自社商品があればという考えからですね。
たとえば弊社ホームページにはミニチュアの車や飛行機を掲載していますが、あれはCAD室の社員のアイデアによるものです。意欲的な社員が多いので、他にも曲線模様を描いて、そこに色を付けたモダンなデザインのコーヒーテーブルやピアス、クリップなどの製作にも挑戦しています。

―――デザインができても形にできないという企業と、提携ができそうですね。

これまでは頼まれたものを作るのみで、私どもには創作という発想がありませんでした。たとえ自社商品の販売を行うのにECサイトを立ち上げても、今はまだ対応できる人間が社内にいません。急がず鋼材の強化に集中して、いずれはマサカツ鋼材の製品として確立できるものを生産、販売したいと思っています。今後、ぜひやっていきたいことの1つですね。

―――SDGsや地域貢献への取り組みにも積極的です。

広島にあるバイオマス製造機械を製造している会社と提携し、「もみ殻」を圧縮した固形燃料を地域へ提供しています。コロナ禍前には「枚方まつり」に出店し、枚方市にも災害備蓄用として購入してもらいました。

その会社はバイオマスに関する事業を行っており、固形燃料を炭にしたものや、その炭から活性炭を作り浄水器に利用したりしています。そのままでは産業廃棄物となる「もみ殻」の有効利用が、持続可能な循環型社会にも、また環境の負担軽減にも貢献すると、共感して提携させていただいて、私たちも一般消費者向けに一部商品を取り扱っています。

マサカツ鋼材の名の由来は、4人兄弟のうち私長男と次男の名前です。以来続いて三男、四男も事業に加わってくれました。兄弟で力を合わせ、社員と共に、できる作業を一つずつ増やしていった結果、今日のマサカツ鋼材があります。創業から24年、これからもお客さまのためにもなり、弊社の武器にもなることを少しずつ頑張っていきたいと思います。

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